啐啄同時…

禅に啐啄同時(そつたくどうじ)という言葉がある。

ひなが卵の殻を割ってかえる時、
まだ小さく柔らかい口ばしで堅い殻をやぶろうとするが、
この機を逸せず親鳥が外から口ばしで卵をコツンと突くと、
殻がパッと割れて中から無事にひな鳥が生まれてくる、と言う意味である。

たかが鳥の誕生神話ではない。

世の中には、何ごとも一人で成し遂げることはなく、
親や周りの協力があって成り立つことの娑婆の教えであろう。

だからと言い、
まだ「ひな」になる前に親鳥が口ばしで突いてはいけなく、
ひなにかえろうとする丁度良いタイミングを計らい突くことが大事である。

いい大人達は、自ら殻を破ろうとするまで待ちきれずに、
無理に破る環境を提供したり、手を貸し過ぎたり、
ひなにかえろうと踏ん張っているのを見ながら未だだよと、
成長に必要な頑張りを妨げてはないか…
何だかんだ理由を並べ立て成長を認めず貧弱なひなにさせてはないだろうかと。

人が育たないといわれる昨今、
自分に当てはまっていて、身に染みることだから
常に肝に念じている言葉である。

非常に厳しいが戒めたい教えだと思うから、
今晩はすこし反省がてら自分以外の人への欲を捨て、
その欲を流す練習をしてみる。
肩にある重いものが軽くなる気がするのだから…